のびのびこども園

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2021年11月2日

二つの誇らしい気持ち


先月の運動会、応援ありがとうございました。入場者を限った参観でしたが、保護者の方には子どもたちの生き生きとした姿をご覧になっていただけたのではないでしょうか。

お家でお子さんをたくさんほめてくださったことと思います。子どもは誇らしい気持ちになったことでしょう。運動会の活動を例に、誇らしい気持ちの2つの種類についてお話しします。

913日のブログで「自分は尊重される価値がある人間だ」と信じられることが大切だということを書きました。これがひとつめの誇らしい気持ち「自尊感情」です。幼いうちからかわいがり「いい子だね」「えらいね」とたくさんほめることで育ちます。自尊感情という土台が無意識のレベルであることは、自分を大切にすることにつながります。この先困難があっても簡単に命を投げ出したりしないでしょう。

しかし、それだけでは社会性は育たないといいます。そのためには「自己有用感」を育成することが必要です。

 

「自己有用感」とは何でしょう。

この写真をご覧ください。

運動会の直前、きりん組が遊戯を練習しているところにうさぎ組が給食を終えて通りかかり、いっしょに踊り出しました。奥では年少ひよこ組が踊っています。憧れの年長のお兄さん、お姉さんが、かっこよく踊っている真似して踊りたくなってしまう 今でも思い思いの遊びの時間、学年を超えてみんなで踊り合っています。きりん組は先生になって教えます。自分が楽しくて練習してきたことが、こんなふうに周りに伝わっていく。なんて嬉しいんでしょう。

次はこのシーンです。

運動会の大きな見せ場、組体操のピラミッドの練習。みんな緊張して臨みます。下で後ろの段は顔が見えません。でも、重さに耐えてクラスのみんなを支えます。そして成功。自分が役に立ったことを実感します。

このような活動は、もうひとつの誇らしい気持ち「自己有用感」を育みます。「自己有用感」は相手の存在なしには生まれてこない、自分を誇らしく思う気持ちです。

では、その様子をみた大人はどうすればいいのでしょうか。

3歳くらいまでは「よかった」「かっこよかった」とほめてあげることで、認められた感覚を持てますが、他人との違いを意識するようになり、自分なりの目当てをもって活動に取り組むようになると、子どもの中に認めてもらいたいポイントができています。そこをわかってほめます。

 

「全員組(人間ピラミッドのこと)すごかったよ。Iちゃんは下で重かったよね。でも砂だらけになってもよく頑張ったね。だから成功したんだね。」

「かけっこ最後まで一生懸命走ってたね。あの姿よかったなあ。バンザイのポーズも決まってたよ。」

「遊戯のポーズおもしろい。よく思いついたね」

 

平成1315年にかけて行われた文部科学省の研究があります。当時の子どもたちの一番の問題を「人と関わりたい」という意欲そのものが低下していることとの仮説で行われました。そのことがルールを軽視したり人を平気で傷つけたりすることにつながっているのではないかという深刻なものです。https://www.nier.go.jp/shido/centerhp/syakaisei.pdf
そこで導かれた一つの解決策が「自己有用感」を学校の中で育むことでした。自分と周りを肯定的に受け止める温かく強い気持ちですね。

大人が考える「1番になった」「うまくできた」という基準ではなく、子どもの基準や水準で認める言葉をかけることで、自己有用感は確かなものになります。

先ほどのピラミッドの一番上に立ったお子さんは、卒園生である小学生のお兄ちゃんお姉ちゃんに手伝ってもらいながらお家でも練習を重ねてきたそうです。一番上に立つためは、身体能力が高く体格が軽やかでなくてはならないのですが、一番上に立つ役に選ばれたこと、持って生まれた才能だけをほめると「自尊感情」を高めることにとどまります。しかし家で陰の努力を重ねてきたことや最後に成功するかどうかのプレッシャーを乗り越え役目を果たしたことまで認めてあげられると、自己有用感が高まるのです。実際お母さんはそうしていらっしゃいました。

幼児期は、人と関わりたいという意欲を育む時期です。自分が無条件に受け入れられているという自尊感情を土台に、自分は役に立っている、自分がしたことが理解され喜ばれていると誇らしく思う経験をたくさんさせていきたいものです。


参考(文部科学省国立教育政策研究所 生徒指導・進路指導研究センター https://www.nier.go.jp/shido/leaf/leaf18.pdf